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星の声
遠い日の記憶·····
あの日、私は大切なモノを失った。
「あなたは今どこにいますか?」
不意に出た心の声が
あまりに冷たく·····
そして酷く醜く歪んで響た―――――
在り来りな風景が、ゆっくりと流れる車窓から、移りゆく景色と夕闇のコントラストが眩く儚くも美しいと思えていた。
あの瞬間。幼心に感じた一瞬のトキメキは鮮烈に、私の胸を射抜いた。
彼との出逢いは偶然が生んだ
―――――賜物賜物―――――
生まれも育ちも生きる糧さえも
私達は
あまりに違いすぎていた。
私達は巡り会うべきではなかった。
気づくには·····
あまりに遅く―――――
そして
あまりに残酷だった。
数年前。当時、私は鎌倉に住んでいた。
ワケあって両親の元を離れ父方の祖父母が親代わりとなり私を引き取った。幼ながらに感じた家庭が音を立てて崩れる瞬間の音色は醜く雑音にしか聞こえなかった。
祖父母は厳しくも現実的で、生きる意味や誰かを思う気持ちの大切さを私に教えてくれた。その温かな愛は嘘偽りなく私を守る盾のように、強く大きく。そして掛け替えない私の唯一の救いだった。
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