静かな時間よ、そのままで

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どんな事情であれ、殺人は犯罪になる。 隆吉とかおりが出所しても2人が会うことは二度となかった。 出所して工場で働いていたけど、真由香の両親と夫が怒りを露にして同僚たちに前科持ちだと暴露をし、 「永遠にあなたを許さない!奏斗には交通事故ってことにしているわ!学費を払ってあげていたのに!」 「恩を仇で返すなんて、妻を奪われた苦しみをお前にはわからないだろ!」 と隆吉にぶつけて去って行った。 かおりにも同じことをした。パン工場で働いていたかおりも同僚に殺人犯だと暴露した。かおりも居場所をなくして、何度も逃亡生活を繰り返して独り身のまま生涯を過ごした。 隆吉は次は誰にも自分を知らない地へと逃げるように、離島へ行った。 過酷な水産の仕事を黙々としていた。昆布を干す仕事して慎ましく過ごしていた。 これからこそ、穏やかに慎ましく。そして、静かに身を潜めて暮らして隆吉も生涯、独り身で島で孤独に亡くなった。
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