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――アルベルト・パライドル・タンザ 後日談――
机の上にどっさりと置かれた書類を睨みつけては、うんざりする。
「なんで、こんな事になってるんだよ!」
俺が机をドンッと叩きながら叫ぶと、隣に控えていた側近のナクサスが、コホンと咳払いをした。
「毎日、エドワード様とザラ様が鍛錬してくださってるからでは?」
「そんなのわかってるっっ!」
「わかっていらっしゃるなら、叫んでないで、とっとと書類を片付けた方が合理的というもの。早くしてください」
相変わらずのナクサスの毒舌にチッと心で舌打ちしながら、プイッと横を向くと、机の隅に置いてあるレースをあしらった白いリボンが目に入る。
クラリスに贈るはずだったリボン……
このリボン……クラリスのブラウンの髪に映えるだろうなぁと想像しては、贈るのを楽しみにしていた。
リボンを用意したのは、まじないを実行する為で……いや、まじないを信じていたわけじゃない。信じていたわけじゃないが……折角のティーパーティー、まじないに乗っかるのも悪くない……と思うじゃん、普通。
ただ、まじないを実行するに邪魔な存在が4人。
ああ、カールは論外。お花畑だからな。
ジェスター、ミカエルは学園の生徒という立場だから、ティーパーティーに参加させないってわけにはいかないが、エドワードとザラが、万が一、しゃしゃり出てきたら面倒くさい。
で、策を練ったわけだが、あの2人の方が何枚も上手で、結果、この書類の山だ。
「ああ、そうそう、本日もエドワード様とザラ様の鍛錬が午後から入っております故、早急に書類を片付けて下さい」
ナクサスから午後の予定を聞いて、げんなりした俺は、バタンと机に突っ伏した。
これで、7日連続のお呼び出しだ……身体はボロボロ、公務は滞る、学園に行く時間もない、クラリスにも会えない。
もう限界だ……
「なぁ……今日は断れないかな……」
おずおずとナクサスに提案すると、間髪入れず、ナクサスが言い放つ。
「駄目です」
デスヨネー
「王子、エドワード様とザラ様がどのようなお立場の方かわかっておりますか? その御二方からの鍛錬を断るなんてしてはなりません。第1王子のウィリアム様も羨ましいとおしゃっておりましたよ。一体、何をすれば、連日鍛錬をしていただけるのかと……」
恨みを買えばだよ!
そう、我が国の攻防の要であるあの2人は、国の超重要人物。
王族であれど、あの2人を無視することはできない。
まして、俺とは師弟関係なわけで……断るなんて言語道断。許されない。
そんな2人に策を講じて、見事にバレてしまった俺は、今現在、鍛錬と名のついた嫌がらせを受けている……
あー、もう、俺に構わないでくれぇぇ。クラリスにも構うなぁぁぁぁぁ!!
あいつら、本当は暇なんじゃないのか?
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