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「うん。それもそう。合ってる。おれ、死んだ」
「……じゃあ、なんで」
「ユウレイだから? ん、よく分かんない。ていうかそっちこそおれが、見えるんだ?」
「……うん」
「不思議」
「不思議、だね」
悠真くんは深く息を吸って、教室を見渡した。旧館の工作室は、私一人しかいなかった。美術部の活動は基本月曜日だけだったけれど、使いたい時はいつでも使っていいことになっている。美大を目指す私は、いつもここで一人、絵を描いていたのだった。
「ねぇ、ももか」
「ん?」
「おれの絵を描いてよ」
「え? 悠真くんの?」
「そう。おれの最期の姿。遺影? みたいなやつ」
「遺影、とか」
喉がつまった。そんなの、十六歳に使う言葉じゃない。
でも、悠真くんは何というか、いつものノリだった。宿題うつさせて。マンガ貸して。遺影描いて。そんなノリ。
「頼むよ。一生のお願い」
「一生とか」
「あー、はは、もう終わってるけどさ。おれの一生。でも、描いてみてよ。顔だけでいいから」
そう言って悠真くんは、私の目の前に座った。
「はい、スタート」
私は、悠真くんの顔をまじまじと見つめた。
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