45人が本棚に入れています
本棚に追加
少しだけ目が隠れるくらいの前髪。少し人より薄い肌の色。それから、穏やかに暗い二つの瞳。
「……油絵にしようかな。やったことないけど」
「おお、すげー、油絵か」
「あるかな。探してくる」
背を向けて、道具棚の方に行く。
涙を、どうにかしなくてはいけなかった。
それからというもの、毎日のように悠真くんの絵を描いている。
結局は自前の、アクリル絵具にした。まずは下書きをして、その上に色を乗せる。しゃり、しゃり、と鉛筆が、徐々に、悠真くんをキャンバスの上に浮かび上がらせていく。
描いてみると、分からなかったことが、分かってくる。悠真くんのまつ毛は長い。悠真くんの唇は赤い。悠真くんって。悠真くんは……
「ねぇ、ももか」
「……何?」
「まだ?」
悠真くんは、落ち着きがなかった。
「まだだよ。まだ色も塗ってない」
「えぇ〜」
「せめて下書きまでは、じっとしててね」
「あれさ。ゆーたろーたち、なんか言ってた?」
「え?」
「おれが死んでさ。……泣いてたりした?」
私は手を止めて、思い出した。
「……そりゃ、泣いてたよ。みんな、泣いてた」
「……そっか」
「だって急だったんだもん」
最初のコメントを投稿しよう!