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「何だよそれ」
悠真くん。
消えかかってるよ。
本当はそう言いたかった。
毎日見つめているけれど、改めてキャンバスの絵と比べると、分かる。悠真くんの肌は、髪の色は、一週間前はこんなんじゃなかった。もっと白かったし、もっと黒かった。もっと輪郭が、くっきりとしていた。
日増しに、その予測は確信として強固なものになっていった。キャンバスが完成に近づくにつれて、悠真くんの顔が色づくにつれて、逆にユウレイの悠真くんは、悠真くん自身は色を失っていくのだった。
悠真くんの皮膚を通して、うしろの壁が、窓が、カーテンが、うっすらと見える。
「ももか」
けれど悠真くんの声は、相変わらずくっきりと、聞こえてくるのだった。
「ももか。おれが、見えてる?」
「……見えてるよ」
「そっか。でも……何か、今日、天気悪いね」
「えっ……」
窓を見ると、焦がしバターのような午後四時の日差しが、まぶしいくらいに降り注いでいる。
「あ……そうか」
悠真くんの方が先に言った。
「ユウレイにも、命はあるんだな」
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