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悠真くんは、自分の手を見ていた。私には、その悠真くんの手を通して悠真くんの制服のしわ、そしてその後ろにあるイスの形まで、もう透けて見えていた。
「どれくらい描けた?」
悠真くんが、キャンバスに描かれた自分の顔を、のぞき込む。
「お、もうできてる?」
「うーん、あとちょっとかな。もうちょっと、肌の色をなんとかできたら」
片付けを終えて、私もキャンバスを眺める。
「そうなんだ」
本当は、完成と言ってもよかった。悠真くんの顔の全てに、一応の色をつけることはできていた。だけど、満足だと言い切ってしまうのが、何だか怖い。
もう二度と、悠真くんとこうして、会えなくなりそうな気がする。
「悠真くん」
帰る時間になった。工作室の鍵を取って、私は悠真くんのいる方を振り返った。
「何?」
「悠真くんは、いつもここにいるの? ユウレイになってから」
「んー、分かんないんだよね」
悠真くんは笑いながら、困っていた。
「気がついたらここにいるの。で、気がついたら、ももかが絵を描いてる。そんな感じ」
「ふうん……」
「ももか、いつも絵を描いてたね」
「そ、そうかな?」
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