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「すごーい。森緒くんが、猫人間になっちゃった。寒くなさそう」
パチパチと笹野さんは大喜びで拍手をした。見せたがりの僕は、無事に猫人間になったようだ。
「じゃあ、これで公園に置いて帰れるね」
「あ、でも元気になったみたいで、またベルトをカチャカチャやりだしちゃった」
「猫なのに服を着ているの?」
「そう。森緒くんと同じようなズボンとシャツを着ているの」
なかなかにしつこい。笹野さんの心が反映されているんだとすれば、なんだかんだ言って本当は見たいのか、雄の生殖器の模型を見たのが相当ショックだったかのどちらかなんだろう。
「見せたところで中身は猫なんじゃないの?」
「それは、ズボンの中のことだから、開けてみるまでわからないでしょ」
シュレーディンガーの猫のようなことを笹野さんは言いだす。
「部分的に人間だったら怖いよ」
「たしかにそうだけど」
「カチャカチャやっているのだって、遊んでいるだけなんじゃないのかな。きなこは動くものが好きだよ」
「そうなの?」
「ためしに魚でも泳がしてあげたらどうだろう」
「公園なのに?」
そんなの変だよ、と笹野さんは言う。そもそもがずっと変なんだから、今更だと思うんだけど。
「きなこは、魚の形のおもちゃが好きなんだ。空を飛んでいても、少しも疑問を持たずに遊んでいるから大丈夫だよ」
「わかった」
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