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学校にいる時の森緒くんは、それはそれは爽やかだ。手に持っている文庫本が似合う文学青年といった感じで。キャーキャー言われているわけではないけど、ひっそりと彼に憧れる女の子は多い。
彼の読んでいる文庫本には必ずカバーが掛かっている。みんなはきっと文学作品を読んでいると思っているだろうけど、実際は違う。森緒くんがカバーを掛けているのは、中身がバレるとイメージ的に都合が悪いからだ。
今日の本はきっと、凶悪犯罪に手を染めた世界の死刑囚がどのような最期を迎えたかを書いたノンフィクション本だと思う。犯罪の内容についても詳細まで載っているから、間違っても読んで感動する本ではないし、それをニヤニヤして読んでいたら気味悪がられること間違いなしの本。でもそんな本を森緒くんは好んで読む。
なんで内容を知っているかというと、私が最近買ったばかりの本だから。森緒くんが僕も読みたいなと言ったから貸してあげたのだ。
品行方正で頭のいい森緒くんは、みんなに好かれる爽やかで優しい人だ。だけどそれは表の顔で、世の中の悪いことにとても興味があったり、意地悪で弄れた物言いをして、こういった本を口元を緩めながら読むのが森緒くんの裏の顔だったりする。
私が好きなのは裏の顔の森緒くんだったはずなのに、最近はどちらが表でどちらが裏なのか、わからなくなってしまった。多少作っている部分はあるにせよ、どちらも森緒くんなんじゃないかなと思えてきて。
そんな森緒くんだけど、最近おかしくなってしまった。どこがおかしいかというと、ああダメ。そんなこと考えたらまた来ちゃう! とにかく森緒くんはすっごいのだ。
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