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「とにかくね、それからというもの、私の頭の中で森緒くんが生殖器を見せつけてくるから困っているの。できたらやめて欲しい。やめてください、今すぐに。お願いだから」
「笹野さんの頭の中の僕は僕じゃないし、そもそも僕のを見たわけでもないのに、とんでもない言われようだと思うんだけど」
「そうだけど……、一応森緒くんは森緒くんだから。だって、他に森緒くんはいないでしょ」
「納得はいかないけど、僕としても笹野さんに会えないのは面白くないし……。まあいいや。笹野さんの頭の中の僕がしてしまうことに対して、責任は持たないけど、やめさせる努力はするよ」
森緒くんは、どんな話も一応受け止めてくれる。そんなところが彼の優しさなんだと私は思う。
「ありがとう。できたら早急にお願いしたいの。今、まさに見せつけられているところだから」
「なんだかな。笹野さんは僕と会いながら、僕ではない僕のアレを頭の中で見せつけられているってこと? つまり笹野さんが僕を避けていた理由は、僕のことを考えると、それがフラッシュバックしちゃうからだったんだ。まあ……良かったのかな。僕自身が気に障ることでもしちゃったわけじゃなくて」
「しているでしょ。今まさに。ほら、ほら!」
頭を指さした私を可哀想な目で見て、森緒くんは両手のひらを上に向けながら欧米人のように肩をすくめてみせた。
「何度も言うようだけど、それは僕がしているわけじゃないからね。とにかく、なんとかするように考えるから、今日の放課後はちゃんと公園で待っていて」
「待って! 森緒くんはわかっていないと思うの」
私は歩き出そうとした森緒くんの学ランの裾を引っ張って、彼を引き留めた。
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