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メガートン家の葬儀
と、いうのが一昨日までのこと。
三日前にロミナ嬢が死んで、次の日にはいきなり容疑者にされたジュリアスに会いに行った。
そして一日あけた今、私はそのジュリアスの葬式に出ている。
そう。ジュリアス・メガートンの葬式だ。
昨日のロミナ嬢の葬儀には劣るが、かなり盛大に執り行われている。
「アイヴィー嬢」
さっきから、ジュリアスの弔いの場であると言うのに、メガートン夫妻はそっちのけで、私ばかりが声を掛けられる。
「御機嫌よう」
「お久しゅうございます。その節はお父上様に大変お世話になりました」
そう言って深々と頭を下げてきたこの紳士は、まだ健在であった頃の私の父、アンガス・ディオクロイスに、屋敷内の窃盗事件の捜査を依頼した侯爵家の長男だ。
……いや、次男だったかしら。
「こんにちは。ディオクロイス公爵令嬢」
「こんにちは」
「ディオクロイス公には生前、多大なお力添えをしていただきました。このご恩は是非ディオクロイス嬢にお返しさせていただきたい」
「お気持ちだけ受け取らせていただきますわ。私は父の仕事に一切関与しておりませんでしたので」
次に現れた男は、街で起きた殺人事件の犯人として疑われていた子爵だ。
私の父が冤罪を証明し、九死に一生を得たのだ。
「ディオクロイス嬢、ご機嫌麗しゅう」
次に挨拶をしてきたのは、一人息子を暗殺されかけ、その犯人を父に暴いてもらった貴婦人。
爵位は忘れた。もちろん名前も。
「惜しい方を亡くしましたね。ディオクロイス公は実に聡明なお方でございました」
(ジュリアスのお葬式なのに……)
「ですが、アイヴィー様もディオクロイス公の後をお継ぎになったという噂がございますが、本当ですか?」
「それは……どうなのでしょうか。元々父は、正式な職業として依頼を受けていたわけではございませんでしたので」
「あら、そうでしたわね」
今すぐこの場から立ち去りたい。
でも、これからきっとカストピール夫妻とメガートン夫妻に話を聞かなくてはならない。
なんて憂鬱。
それもこれも、突然ジュリアスが死んでしまったせいだ。
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