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メガートン家の客間
「ジュ、ジュリアス……一体どこへ行っていたの」
感動の涙を流し、メガートン夫人はジュリアスに駆け寄った。
だが、肝心のジュリアスは何も答えずに表情を固めて棒立ちしている。
ジュリアスは荷物を何も持っておらず、服も特に汚れてはいなかった。
「貴方がジュリアス・メガートンね」
「は? え!? あ、あなたは、ディオクロイス様!?」
「まあ! 親が親なら子も子ね! ディオクロイス様に向かって"は?"なんて言葉遣いを!」
ジュリアスの無礼な物言いに瞬時に反応を見せるカストピール夫人。
「ジュ、ジュリアス! ご挨拶なさい!」
母親の剣幕に慌てふためき、ジュリアスは深く頭を下げた。
「ご、ご無礼をお許しください。ディオクロイス様」
「気にすることはございません」
(とにかくジュリアスの話を聞いてカストピール夫人の気を落ち着かせる材料を得ないと)
「ご寛大なお心、感謝いたします」
ジュリアスは紳士的な口調で続けた。
その表情はすでに冷静さを取り戻している。
「カストピール伯爵、そして奥様。お話をほんの少しお聞きしただけですが、心中お察しいたします。粗末な館ではございますが、どうか客間へお進みください。このまま立ち話をしていただくわけにはまいりません。もちろん、ディオクロイス様もご一緒に」
そしてジュリアスは、先ほど私を見てうろたえていた姿が幻であったかと思えるほど上品な態度で、カストピール夫妻を先導したのだった。
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