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「突然押しかけて申し訳ない。だが、我々は一刻も早く娘の死の原因を知りたいのだ」
カストピール伯爵の言葉に、メガートン男爵が目をひんむく。
「ロミナ様が! 亡くなられた!?」
男爵が大きな声を出す。
メガートン夫人も口元に手を添えて、目を大きく見開く。
「じ、事故でもあったのですか?」
「事件か事故かも分からない。とにかくロミナは毒を飲んで死んでしまった」
カストピール伯爵も、メガートン男爵の動揺ぶりにテンパっているのか、早くも深くを語ろうとしてしまう。
だが、口を滑らせた自覚があったのか、カストピール伯爵は気まずそうに私に視線を向けてきた。
(ていうか、結局立ち話なのね)
「まだ詳細は分かっていません。死因が毒死かもしれないということだけ」
私は淡々と説明する。
「ど、毒……」
「ええ。そこでロミナ嬢の死の真相を探るため、私が調査をしているというわけです」
「そ、そうですか」
ショックを受けながらも受け答えをしているメガートン男爵に対し、メガートン夫人は目に涙を浮かべて辛そうに唇を引き結んだまま何も喋らない。
「それで、恋人であったジュリアスをまずお疑いになったわけですね?」
「……」
なんと答えるべきか直ぐに思いつかなかったので、とりあえずだんまりを決め込む。
「ジュリアスが一番疑わしいのよ。あの子の生活に最も関与している存在だわ」
カストピール夫人は腕を組んだまま鋭い目つきでそう言った。
「彼らは恋人でしたのよ? 何故そのようなお疑いを……」
メガートン夫人は潤んだ瞳を向けて言う。
「もし自殺だったとしても、きっと原因はジュリアスにあるはずよ」
「そんな言いがかり、あんまりですわ」
「どうせロミナが疎ましく思えて毒を盛ったに違いないわ」
「ジュリアスはそんなこと致しません。第一、ロミナ嬢はとても礼儀正しく聡明で愛らしいお嬢様でしたわ。どうしてあのような素晴らしいお方の命を手にかけることがありましょうか」
メガートン夫人の言葉に、カストピール夫人は険しい顔をして口籠る。
カストピール伯爵とメガートン男爵は、はらはらと夫人たちを見守っているだけ。
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