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突然の小包
「ご名答。まあ、流れはそんな感じ」
三杯目の紅茶を飲み干したノアが、ティーカップをテーブルへと置いた。
「流石イヴ姉さん。並外れたその推理力。恐ろしいよ」
(……ここまで来るのに、大分ヒントを貰ったわけだけどね)
もはや嫌味にしか聞こえないノアの誉め言葉に小さく心の中で悪態を吐き、私は二杯目の紅茶に口を付ける。
「もうお分かりの通り、その後は死体をジュリアスの部屋へ、そして反対に、彼をワゴンの中に押し込めて花で覆い、"やっぱり花を受け取ってもらえませんでした"って言ってロイドの所へ戻る。以上終了さ」
"とても綺麗なお花だったようで……何とお詫びを申し上げたら良いか……"
メガートン夫人が、妙に申し訳なさそうな態度を取っていたのはそのせいね。
「火は、煙草ね?」
「そうだよ。油塗った死体に持たせといた。いい具合に燃え上がって良かったよ」
その死体は、一体どこから持ってきたのか。
それを聞く前に、どうしても早く確認しておきたいことがある。
「ねえ。やっぱり……ロミナの死因って、ただの自殺じゃないのよね?」
ロミナが死んだのなら、もう結婚を強要される心配はなくなった。
カストピール家の使用人であるソフィアとの結婚は、確かに困難であると思われるが、ロミナ亡き後、そこまで急ぐ必要があったのだろうか?
駆け落ちするにしても、時期を待つべきだったのではないか。
彼らは、何をそんなに急いでいたのか。
もう、私が考えつく理由は、一つしかないのだ。
「お察しの通り。毒殺されたんだ。ソフィアの手によってね」
思った通りの答えが返って来て、私は咄嗟にノアから目を逸らした。
ソフィアは、ロミナに一番側で仕えていたメイドだ。
ロミナがジュリアスと恋人関係にあることを、当然知っていただろう。
ロミナを通じてジュリアスはソフィアと深い仲になった可能性もある。
ソフィアを突き動かした一番の感情は、嫉妬以外何もないだろう。
ジュリアスは直ぐに気付いたのだ。
ソフィアがロミナを殺してしまったのだと。
あるいは、ソフィア自身が打ち明けたのかもしれない。
だから、ジュリアスは急ぐ必要があった。
愛するソフィアが犯人と知られてしまう前に、何とかして逃げ出す必要があったのだ。
なにしろ、捜査をしているのは、他でもない、ディオクロイス家である私だったのだから。
隠し通せるわけがないと、そう確信してしまったのだろう。
「僕が邪魔して遊んでたから、姉さんは中々真実に辿り着けなかったけどね」
ノアは愉快そうに笑い声をあげた。
そんなノアの態度に腹は立つものの、どうしても口を開く気にはならない。
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