ロミジュリ事件終結

3/4
前へ
/101ページ
次へ
「一人で危険なところへは行かせない。姉さんが探偵を続けたいなら、僕もついて行く」  次々と繰り出される言葉は、まるで、恋人に一生の愛を誓うかのような、そんな言葉。 「ディオクロイス家当主として、姉さんを全力で守ると誓うよ」  吸い込まれるような、圧倒されるような、そんな雰囲気だった。 「……本来、当主を継ぐのは長男の役目。昔からそれは、決まっていることよ」  抗えない魅力が、彼にはある。 「ふふふ。素直じゃないなあ」  私の気持ちを分かっていながら、敢えて私が言葉にするのを延々と待つ性格の悪さを棚に上げて、ノアはそんな風に呟く。 (本当に、こんな捻くれ者にディオクロイス家を任せていいのかしら……。でも、頂点に立つ者としての素質は、私の遥か上をいっていることは認めざるを得ない。今回の事件の情報量、考察力も、悔しいけど完敗だわ)  犯罪者の逃亡に手を貸したノアは人でなしだ。  罪のない人間が犠牲になったと言うのに、殺人を許容するノアは、平和を願う人々の敵だ。  とても、街を統治するに相応しい人間とは思えない。  それなのに、こんなにもディオクロイス家の当主として、頼もしいと思えてしまうのは何故?  ただ楽な道を選んだ怠惰な自分を、正当化したい私の醜い心のせいなのだろうか。  ちらりとノアに目を向けると、ノアは私の迷いも全てお見通しであるかのように微笑んだ。 「早速明日、舞踏会を開こう。リチャードに頼んで街中に招待状を配るよ」  そして、私の不安や迷いを散らそうとしてか、ノアは話題を舞踏会へ戻した。 (街中って……。随分と盛大ね。それなのに明日?) 「急ね。何をそんなに急いでいるの?」 「別に何も。ただ、姉さんの隣を、堂々と歩きたいだけだよ」  余りにも爽やかに放たれたその言葉に、私は呆気に取られてしまう。  そんな私を見て、ノアはとてもご満悦だ。 「みんな驚くだろうね。今からすんごく楽しみだよ」 (一体、なんて言って登場するつもりかしら?) 「もうシナリオは決まってるんだ」 「シナリオ?」 「うん。聞きたい?」  上機嫌に鼻を鳴らして、ノアは私が答えを欲するのを待っている。 「ほんと、性格が悪いわ」 「傷付くなあ」 「いいから早く教えてちょうだい」 「ドッキリってことにしよっかなって」 「はい?」  ノアの口から、瞬時には理解できない言葉が吐き出される。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加