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4、怪物
* * *
アリサはアイテム屋の片隅に腰を下ろして、膝を抱えていた。
店主がアイテムを抱えて戻ってくる。そういう風にプログラムされているのか、店主は決まった時間になるとアイテム集めに出かけるのだった。
毎日同じ数をカウンターに並べている。前日に並べた分は処分するのか消えるのか、常に同じ数しか店に置かれていない。
「おかえりなさい。新鮮なメロンパン、見つかった?」
「ザーザー」
店主は輪郭がブレる手で、メロンパンとりんごを並べていく。アリサはその緩慢な手つきを、見るともなく見ていた。
このところ、アリサはため息をつき続けていた。どれも小さなため息だが、それは空気より重くって、吐いたそばから地面へと落ちていくような気がした。そのうちその辺に、小ぶりなため息の塊が見えるかもしれない。
またため息をつきそうになったが、ぐっとこらえる。憂鬱を吐き尽くしてしまったら、身体が萎んでしまわないとも限らないからだ。
立ち上がろうと、腰を浮かしかけた。
「ザー、ザー、ザーザ、あま……い」
「え?」
影の方を振り返ったものの、きっと幻聴だろうと思った。
だが。
「メロンパン……は、甘い……です、よ。ザーザザ、この街の……メロン……パ……」
雑音の中に、確かに、影から初めて聞く言葉が混じっていた。聞き違いなどではない。
呆然としていたアリサだったが、カウンターに近寄って、手をついた。影の店主へと身を乗り出す。
唾をのみこんだ。唇が震える。
「今、何て?」
「メロンパ……オススメです。甘くて……とても……ザッザザ……回復します」
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