2、次の街へ

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 * * *  武器以外の所持品はなく、身軽な状態で三人は街を出た。  石ころも鉄パイプも木刀も、普段はポケットに収納されている。戦闘フィールドに入ると、鉄パイプと木刀は二人の手に自然と握られている。戦闘時以外でも、ポケットに手を入れれば出てくるのだそうだ。鉄パイプがポケットに入るわけがないのだが、そういう仕組みにいちいち引っかかっていてはきりがない。  三人は起伏もなく単調な大地を歩き続けた。  虫も動物も植物も見当たらない。一定の間隔を置いて転がっている灰色の石も、景色の単調さを強めているだけだった。  前に立ち寄った街とは別の街をさがそうと、未知のルートをたどっていく。陽が暮れても建物群は見えてこなかったが、引き返そうという意見は出なかった。  他にも街はどこかに存在する。アリサには、そう思えてならなかった。 「俺達がとどまっていた街と似た街がもう一つあったからな。同じような場所がいくつかあると考えるのはおかしくない」  野宿を決め、地面に座りこんで話をしていると、カタギリがこう言った。アリサの発言を受けてのものだ。  火をつける道具がないので、三人は暗闇の中で話をしなくてはならなかった。火も使えないとは、いよいよ文明的ではない、とカタギリは苦笑する。  とはいえ、夜闇は塗りつぶされた黒ではなく、不思議と相手の顔が確認できるほどの明るさが保たれていた。「暗いのに、ほどほどに周りが見える」というのは異常な現象だが、ポケットに鉄パイプが収まる仕組みと同様、そういうものだ、と便利さに感謝しておくに限る。  アリサは寝転がり、星の数を数えた。いつも違わず同じ位置に星はあり、数は全部で二十四個。とてもホンモノとは信じられず、多分星を模した、安っぽい電飾みたいなものなのだろう。太陽ですら白っぽく、惰性で光っている程度にしか見えない。  美しいものなんて、ここでは見られない。アリサの胸は幾度目かの失望で冷たくなった。  これからもずっと、心を動かされるほどの美しいものを目にする機会なんて訪れないのだろう。  シュウはというと、街を出てから十回ほど戦闘が続いたので退屈していない様子だった。自分に好きなことがあるという事実は認めがたいだろうが、シュウは身体を動かすのが好きなのだ。はたで見ていてもわかる。彼は好戦的だった。  夜が明けて、温もりのない光が死に絶えた地上を照らす。夜と朝の繰り返しは、意味のある営みとはほど遠い。死んだ世界の緩慢な痙攣によって引き起こされる単なる明滅だ。  再び歩き出すと、やがて地平線上にでこぼことした形が浮かんできた。街だ。
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