1.次回予告「不満な食事」

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1.次回予告「不満な食事」

 スマホが突如として壊れたのは昨夜の電車の中であった。夕闇に包まれた車内は満員に近い状態で、そのせいで電波の入り具合でも悪くなったのかと思った。それで人と人の僅かな隙間を見つけようと模索したりしたが、男の人の股間ばかりが目に入り何だか少しばかり虚しくなってきて、真っ黒な画面に視線を戻し凝視した。すると、そこに映る私の顔と目が合った。余り見覚えの無い顔だなと、無駄なプライドが変な拒否反応を誘い出した。  それはさておき、電源ボタンを強く押したり長く押したりしてみたが、画面が変わるような気配は全くないのである。  私は、諦めた。時には純白のような潔さが必要だと思ったからである。  翌日の土曜日、ショップに出向いた。店員にスマホを見せて昨夜のことを説明した。 「あ、これはもう駄目ですね。買い換えるしか無いと思いますがどうされますか?」  即答とその勢いに押され、「えっと、じゃあ買い替えます」 と答えてしまったことは言うまでもない。 店員は、徐ろに立ち上がると裏の部屋に入り、そしてすぐに戻ってきた。 「とてもラッキーでしたね。今日から発売になった新機種があるんですが・・・・」 と、手に持った銀色のスマホを差し出してきて、プランとかパスワードとか、何か難しいことを長々と説明を始めた。スマホのなんやかんやに拘りの無い私にはこれが苦痛の時間だ。  最後に、「このアプリも入れておきました。すごく便利なので毎日使って下さいね」と念を押すように言われた。  値は少々張ったが、私は二つ返事でこれを買った。  帰宅するとすぐに格闘が始まった。店で説明された機能とかはほぼ頭に入って無く、箱の中をくまなく探しても昔のガラケーみたいな説明書も付いていなかった。そういうことで実際は格闘のしようも無い状況に陥って、投げやりな気分になってしまった。 「そう言えば・・・・」  あの時の店員の顔を思い浮かべつつ、私は例のアプリを開いてみた。 「次回予告」 白い文字が出てきた。タイトルか何かかな? まあ、何でも良い。私は画面下の「次へ」をタップした。すると、「不満な食事」と青文字で表示された。はて、なんの事だろうか?
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