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「見たらコロス」
彼女のアパートへ入り浸るようになって、半年。書きかけの小説を見られたくなくて、わたしは彼女を押し倒した。
もちろん、必死の抵抗でなったことだけど、それだけでは終われなくて。乱れた髪と、虚な瞳があまりに美しくて、初めて彼女の頬に触れた。
拒絶されるのではと、慌てて離れるけど、恥じらうように染まり上がる顔に、理性が飛んだ。
これまで、ひた隠しにしてきた欲望があふれ出すように、彼女の体中に痕をつける。ただ、唇だけは除いて。
「……ねぇ、千秋。なんで、こんなことするの?」
衣服がずれ落ちて肩が露わになったまま、彼女は甘い吐息を漏らす。
「……したかったから。じゃ、だめ?」
心の底を見抜かれるのが怖くて、濁した答え方をした。
小さく首を振る彼女の首に顔を埋めて、もう一度キスをする。
唇にさえ、しなければいい。
なんのお守りにもならない暗黙のルールを作って、わたしたちはお互いを求めるようになった。
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