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十二月の初旬。一年ぶりくらいに、地方にある実家へ帰って来た。理由は、中学時代の友人の結婚式に出席するため。
十年ぶりに連絡が来たと思ったら、これだもの。懐かしさと祝福を通り越して、羨ましさの方が少し上回った。
物が残ったままの自室を物色していると、母が入って来て。
「レナ、今回は何日おれるの?」
「明日の夜には帰るよ。仕事あるもん」
「そう。夜は食べてから帰る?」
「そうしようかなぁ」
アクセサリーの箱を出しながら、私は生返事をした。
「ちゃんと、ご飯食べとるの?」
「食べとるよ。たまには自分でも作るし」
「ならいいけど。もう少し連絡ちょうだいよ。いろいろ心配やでさ」
「……うん、ごめん」
母の一番聞きたいことは、なんとなく分かっている。たぶん、「誰かいい人はできたの?」だろう。
入社したての頃は、帰省する度に言われていた。その話題になるのが嫌で軽くあしらっていたら、そのうち聞かれなくなった。
クローゼットの隅にあるベージュのパーティードレスを出して、鏡で合わせてみる。
明日、花嫁になる友人に会うことより、十年ぶりに顔を合わせる同級生となにをはなしたらいいのか。そのことばかりが頭を占めていた。
「ええー、付き合って二年なの? じゃあ、ミヤコもそろそろじゃない?」
「でも、まだプロポーズしてくれないんだよね」
「そのうちあるでしょ。ねっ、レナ」
不意打ちにふられて、ワンテンポ遅れながらうんと頷く。くるとは覚悟していたけど、料理が運ばれてすぐだったから。
口の引き攣った感じが収まらなくて、思わず手元のファジーネーブルを飲んでごまかした。
「レナはどうなの?」
「……えっ、なにが?」
「とぼけちゃってぇ。カレシ! おるの?」
「……ううん」
「いっしょだ。いいよね〜、結婚。憧れるよね〜」
彼女の視線の先には、純白のドレスで微笑む友人がいる。みんなから祝福されて、最愛の人が横にいて。人生で一番輝いている瞬間と言えるだろう。
結婚が女の幸せだなんて、誰が決めたの?
心の奥で、ずっとそう思っていた。言い聞かせていた部分もある。
でも、今日ここへ来て実感した。私の求める幸せは、きっとみんなを笑顔にできないってこと。
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