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「ヒイィィィッ…… 」
闇医師はベッドから飛び降りた。
破壊の音の向こうから現れたのは、バールを手にした黒崎。
「お、お願いです。
や、やめてくだ…… 」
四つん這いで床わ這いずり逃げる闇医師の頭に、
「テメェが売人に連絡しなきゃ逃げ切れたかもな」
黒崎の持っていたバールが振り下ろされた。
鈍い音と共に闇医師は床へと突っ伏した。
その背中へ黒崎が馬乗りになり、
「一瞬でも電話が繋がったら、位置情報は俺の携帯に届く」
痙攣して震えている頭を、右、左、右、左、何度も何度も殴り続けている。
「少しでも長い時間楽しもうと、この場所に覚醒剤を持って来させたのがテメェの運の尽きだ」
痙攣は止まり、もうピクリとも動いていない。
黒崎の目線が霧子へと向く。
「ま、待って…… 」
先程の快感を遥かに超える恐怖が脳を支配する。
「人間欲張ったらろくな事はねぇんだよ」
黒崎はベッドの上にいる霧子の髪の毛を掴んで引き摺り下ろす。
闇医師を中心に絨毯に広がる赤はピンクのライトで掻き消されている。
「お、お願いします……
本当に、本当になんでもしますから…… 」
硬い右拳が霧子の頬に当たり吹き飛ぶ。
意識が朦朧とする。
黒崎が近づいてきて、また髪の毛を掴んで顔を上げさせる。
「俺はなぁ、金の無い女が嫌いだと言ったが、俺を裏切る奴がそれ以上に嫌いなんだよ」
強烈な張り手で意識が遠のいていく。
黒崎の口が動いているがもう何も聞こえない。
今までを思い返し、
『体を売ってでも金をつくれ』
『腎臓を一つ頂きます』
口の動きと合わせてみる。
『肺、心臓、目ん玉、脳味噌、お前が売れる全ての物を貰う。
俺を裏切った分の利息だ』
「い、いやぁーーーーっ! 」
恐怖に侵され尽くした悲鳴をあげて気を失った。
「薬漬けになった体なんて売れやしねぇよ」
黒崎はバールの指紋を一度拭き取り、霧子の右手に握らせる。
枕元に置いてある四百万円を手にして部屋を後にした。
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