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闇医師
薄暗い灯りしかない路地。
何十年も前に建てられたであろう無機質なコンクリートの建物の中へと二人は入って行く。
「こんなところで…… 」
霧子は不安を口にする。
黒崎は下矢印ボタンを連打している。
そのせいかは分からないが、エレベーターはすぐに到着した。
腰を押して霧子を先に乗せ、
「設備はちゃんと整っていますよ」
心配は要らないと告げながら、大きな体をエレベーターの中へ。
閉まるボタンを押してすぐに地下二階へのボタンを連打する。
扉の閉まったエレベーターは、年季の入ったワイヤーの擦れる音を立てながら下りていく。
霧子には長く感じられたが、
「それに…… 」
実際は、黒崎の話が接続詞で止まる数秒程で到着。
「先生の腕は確かです」
扉が開くと、また霧子の腰を押してエレベーターの外へと追い出し、「あちらです」黒崎は左手奥の部屋を指差した。
他の部屋には人の気配は全く無い。
二人の足音だけがコツコツと響く。
黒崎は携帯電話を手に取って素早くタップし、相手へと繋がると、
「着いた、開けろ」
ドスの効いた低い声で囁く。
部屋の前へ到着すると同時に扉が開いた。
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