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背中に痛みを感じ、目尻に皺を寄せながら瞼を開いた。
痛みのある右腰の部分を右手で押さえながら上半身を起こす。
壁に掛けらた時計を見ると、この部屋に来てから丁度三時間後の数字を指している。
「お目覚めですか。
手術は無事終了しました」
「内臓が一つ無くなったんだ」そう思うと、腰の痛みは大した事ないように思えてくる。
「まもなく黒崎さんがやって来ます。
準備なさってください」
そう言われても、手術の為にはだけていた服を元に戻して立ち上がるだけ。
「これで、十万円が手に入るのよね」
玄関に向かいながら闇医師に尋ねる。
闇医師は眼鏡の奥の目元をニヤケさせ、
「手に入るんじゃなくて、貸し付けさせられるんですけどね」
ヒヒヒヒッと笑う。
この男に対しての嫌悪感が増し、それ以上返事をしないでいると、
「大事な物ですよ。
お忘れになられないよう」
右手を掴まれ、小型のジェラルミンケースを手渡された。
それはキンキンに冷えており、中で自分の腎臓がまだ生きているという事を教えてくれる。
「それと、これもどうぞ」
今度は左手を掴まれ、小さなメモを渡される。
気持ち悪い、と思ったが渡されたメモを三本指で器用に開けて中身を確認する。
「えっ…… 」
思わず振り返って闇医師の顔を見る。
その表情を見ればもう充分だというように、
「時間です。
ヒヒヒヒッ」
霧子と壁の間を縫って入り、チェーロックを外して鍵を開ける。
その間に霧子はメモをスカートのポケットの中へと滑り込ませた。
ドアノブに闇医師の右手が掛かり、クルリと捻って扉を押し出す。
「終わったようですね」
目の前には、笑顔の黒崎が立っていた。
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