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賭博
エレベーターの中でジュラルミンケースを黒崎へと手渡すと、
「では、約束のお金です」
ダブルのスーツの内ポケットから封筒を取り出し霧子へと差し出した。
霧子は両手で受け取り、中身を丁寧に数える。
「顔がニヤケてますよ」
黒崎の言葉にハッとなり、口を真一文字に結んで数え直し、枚数に間違いがない事を確認した。
エレベーターを降りると、黒崎は左手を一度上げ下ろして左手首に嵌められた金色の時計で時間を確認すると、
「午前二時三十二分。
半端はオマケです。
三日後の三時に例の店の前でお待ちしております」
返済期日の確約を取る。
「この前聞いた通りに動けば間違いないのよね? 」
霧子の改めての質問に、
「百パーセントではありませんよ。
この間も言いましたが、公のギャンブルよりかは確率が遥かに高いという事です」
「健闘を祈ります」と告げて霧子の元から離れ歩いていく。
霧子は、離れていく大きな背中に向かって叫ぶ。
「もうちょっと丁寧に教えてくれてもいいんじゃないの! 」
「鮮度が大事、急ぎますんで」
右手に持ったジェラルミンケースを軽く上げて揺らし見せ、
「あなたも時間を大事になさった方が良いですよ」
霧子の視界から消え、
「そ、そうね。
時間はそんなにないんだ」
黒崎の言葉に納得しながら、闇の続く路地を小走りで移動した。
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