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狭いエレベーターに乗ると、【15】のボタンをした。
ワンフロア全体で一部屋という最上階。
チン、という古めの音が鳴ってエレベーターの扉が開く。
降りてすぐに頑丈な扉。
カメラの付いたインターホンを鳴らすと、
「はい」
愛想のない応答が返ってくる。
「あ、あのー、片島忠雄さんの紹介でお邪魔させてもらいました」
黒崎の債務者の名前を告げると、
ガチャリ
重い鍵が動き、扉が静かに開く。
「いらっしゃいませ。
どうぞ中へ」
今度は愛想満点のトークをされながら、
「片島様はお見えにならなかったんですね」
カジノルームへと案内される。
「え、えぇ。
なんか忙しいみたいで」
霧子も片島という人物がどういう状況にあるかは分からない。
それを黒崎に尋ねたところで恐ろしい答えしか返ってこないと思ったからだ。
「存分にお楽しみください」
そう言って黒服の男は去って行った。
部屋の中はすでに数名の男達がカジノを楽しんでいる。
まず目に飛び込んでくるのは、派手な光を放っているスロット。
『スロットは打つな。
いくら設定が良くても飲み込まれることがある』
その左に視線を移すと、カラコロカラと小さな球が転がるルーレット。
『ルーレットも悪くはないが、ディーラーの腕だけでは制御しきれない場合もある』
その奥に視線を移す。
『バカラです。
新規客は間違いなく勝たせてくれます』
早る気持ちを抑え、どの遊びにも興味があるというようにチラチラと視線を移しながらバカラの席への前へ。
「遊ばせてもらっていいかしら? 」
蝶ネクタイの男は黒服よりも愛想の良い笑みを浮かべ、
「どうぞ」
真ん中の席へと掌を伸ばした。
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