借金

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借金

「もう少し、もう少しだけ待ってください」 涙声で土下座して懇願する霧子。 黒崎はそれを見下ろし、 「どういう事ですか? 今日が期限だと言った筈ですが」 丁寧な言葉で説明を求める。 「もう少し、もう少しだけ…… 」 土下座したまま色気を出して見上げてくる霧子の髪の毛を掴み上げ、 「何で期限の今日に支払いが出来ているか聞いてるんですよ」 サングラス越しに睨みを効かせる黒崎。 「だ、だったらあなたの女にでもなりますから…… 」 そう言って黒崎の三つのタックの入ったスラックス、その股間のチャックに手を掛けるが、 「私は金の無い女が嫌いでねぇ」 その行為は強烈な膝蹴りを喰らった。 ブチブチと音を立てて髪が切れ、鼻血を出しながら倒れ込む霧子。 再び髪の毛を掴み上げて強制的に目を合わせさせ、 「体を売ってでも金をつくれ。 お前みたいなババァでも好んでヤってくれる奴は万といる。 今日からソープで住み込みだ。 寝ずに十年も働き続けりゃあ返せる」 少しだけ口の悪くなった黒崎は、倒れ込んでいる霧子をそのまま引き摺り歩き始める。 「これでも三十代前半に見られるんだけど」とは口が裂けても言えない雰囲気。 また髪を引きちぎられそうな痛みに耐えながら、 「お、お願いです! あと一週間…… いえ、三日だけ待ってください! 」 再度の懇願に黒崎の歩みが止まった。 持っていた髪の毛を投げ捨てるように離して振り返り、 「ほぉ、今日返済出来ない奴が三日後にどうやって返すって言うんですか」 膝をかがめて霧子の鼻先まで顔を近づける。 「あ、あの…… あと十万円ほど貸していただければ…… 」 殴られるのを覚悟で頼んでみると、 「ふぁっはは、面白い事言うじゃありませんか」 黒崎は大声で笑った。 勿論目の奥は笑っているようには見えなかったが。 「もう回収出来るはずなんです! パチンコも競馬も競艇も…… 」 霧子は自分で言いながら失敗したと思った。 借金が出来た理由のもので借金を返すという現実味の全く無い話。 怒鳴られ、また引き摺られていくと両瞼を強く閉じた瞬間、 「もっと確率の良いギャンブルがある」 意外な言葉が返ってきた。 「えっ? 」 驚きと内容への問いで声が出るが、 「だだし、返済期限の遅れたあなたに無償で十万円を貸すわけにはいきません」 丁寧な言葉遣いに戻った黒崎は、借りる為の条件を話し始めた。
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