走り抜けろ八百万の神たち

3/4
前へ
/4ページ
次へ
「疲れすぎて立ち上がれないたぬ吉、ダッシュババアに手を貸してもらってなんとか起き上がりました」 「素晴らしいスポーツマンシップです、感動しました」  キサラも微笑みながら拍手を送る。キサラと狛犬は実況席から立ち上がりたぬ吉の元へと向かった。 「たぬ吉さん、おめでとうございます」 「ありがとうございますポン」 「あ、レッサーパンダの風太君みたいに立つといつものポンポコスタイルになるんですね。さあ、キサラ様に願いを!」  皆が注目する中、たぬ吉は迷う事なく告げた。 「来年一年、腱鞘炎も肩こりも目がショボショボする事もない、健康に過ごしたいポン!」  一部のガチで位の高い神々は目を点にするが、いわゆる妖怪などの類の者たちは「さすが!」と賛辞を送る。もっと贅沢な願いも、なんでも叶えてくれるのだが。それこそ神になりたい、強大な力が欲しい、これらも叶えてくれるのだが。  八百万の神が願うのは、こんな感じの願いだ。 「初詣じゃないので、一年限定じゃなくていいんですよ?」 「体力作りは自分でやるポン、腱鞘炎にならないために筋トレするポン! でも筋トレするには腱鞘炎治さないとできないポン」  腱鞘炎って筋トレで予防できないんじゃ? と思ったが、たぬ吉の決意に燃える目を見て突っ込むのも野暮かなと思い言うのをやめた。なんやかんや、筋トレは健康維持になる。  その会話を聞いていたキサラはふむ、と少し考えてから。 「じゃあ願いは“来年一年健康”でよろしいかな」 「お願いしますポン!」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加