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「さあ始まりました、毎年恒例、福男っぽいことをパクって八百万の神たちによる走り抜けるイベント。一位は願いを叶えてもらえます。実況は私、狛犬と解説は神社の主」
「キサラがお送りします」
スタートラインには古今東西の神々が今か今かと待ちわびている。ゴールである本殿前に一番に着いた者はキサラが願いを叶えてくれるのだ。
カウントダウンが始まり、ゼロ、とともに一斉に走り始める。数年前はパァン、と音が鳴る競技用ピストルを使っていたが近隣住民が「怪奇現象が! ラップ音が聞こえるんだ!」と騒ぎ始めたのでやめた。
「スタートしました! 頭一つ飛び出したのは龍馬だ、りょうまと読まれがちな神獣になりそうでなれてない不憫なハーフ! 願いは神獣になること、ではなく自分のアクリルキーホルダーを近所の神社で売ってもらう事!」
「庶民的な性格ですね」
「他の顔ぶれも速い逸話が多い者たち!」
神々は凄まじいスピードだ。闇夜に紛れ人間の目には映らない。白バイも真っ青なスピードで走る神たちを、狛犬は正確にとらえて実況する。伊達に拝殿前に鎮座して魔除けとなっていない。狛犬は千里眼、全てを見通す力がある。
「おおっと!? 後ろから火柱が迫る! いや、あれは人だ! 燃える人間がものすごい勢いで走ってくる! 燃えたくないからみんな道をあけているぞ! モーゼのようだ!」
グングン迫る火柱人間はあっという間に一位になった。このまま一位でゴールかと思いきや、コースを外れて違う道へと走り去る。
「あ!? コースを外れました!」
「単にジョギングしてただけみたいですね」
「何というお騒がせ! 何で燃えてるんでしょうあの人!」
「須佐之男命の気配を感じたので生まれ変わりでしょう。生まれ変わっても燃えてるんですねあの人」
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