待ってる場所がある

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 キーンコーンカーンコーン  6限の終了を告げるチャイムが鳴った。  いつもなら目覚まし代わりのこのチャイムだが、今日は珍しく起きていた。  帰りのHRが終わると私は一目散に公園へ駆け出した。今日、私は幼馴染の瞬に告白する。  瞬とは3歳の頃、公園で出会ってから中学校までずっと一緒だった。  高校は離れちゃったけど、お互いの部活が休みの金曜日だけ、初めて出会った公園で待ち合わせて一緒に帰っている。  公園が近づくと自転車置き場にはもう瞬のちゃりんこが置いてあるのが見えた。途端に緊張感が走る。  私に気がついた瞬は、私の緊張なんて知らずに駆け寄ってきた。 「おつかれ」  瞬はそういうと温かいココアをくれた。相変わらず優しい。瞬は私がコーヒー飲めないことを知っている唯一の人。 「今日は私からも」  私はそう言うと、今日の調理実習で作ったクッキーを渡した。 「クッキーじゃん。手作り?お前そんなことするヤツだったっけ?」 「今日の調理実習、お菓子作りの授業だったの。味は保証しないからね」 「あー、なんだそういうことか」  瞬はクッキーを1口パクッと食べた。 「どうかな……?」 「うーん、ポテトチップスのほうが美味しい」 「えっ」 「冗談だよ。冗談。美味しい。今まで食べた中で一番うまい」  瞬はいたずらっぽく言った。 「それは言い過ぎ」 「ほんとだってば」  一気に緊張がほどけた。今なら言えるかな。私の気持ち。 「あのね……瞬」  月曜日。私は部活が終わると学校の門へと駆け出した。  そこには、私とおそろいのマフラーをした瞬の姿が。  二人で肩を寄せ合い手を繋いで歩き始めた。  スポーツバッグにおそろいのキーホルダーをつけて。
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