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「わぁ。始まったみたいね」
「こんなにたくさん見えるんだ!」
......
町のあちこちで歓喜の声があがるのを聞きながら、余所行きのワンピースに身を包んだ千代は嬉しそうに山間の高原へと向かった。
その場所は細い山道を抜けた先にあるので他に人が来ない、千代と俊だけの秘密の場所だった。
花火や星空観賞にも最適の穴場で、よく2人でここに来ては色々なことを語り合った。
それらはもう思い出となっており、そのことが千代を悲しい気持ちにさせていたが、今日は久々にウキウキとした気分でいる。
「わぁ。久しぶりの場所!それに、やっぱりここからならよく見えるね♪」
いつも通り誰の姿もなく辺りは静まり返っていたが、夜空を眺めると流星群が実に美しく鮮明に見られた。
千代はしばしその夜空にウットリと見とれていたが、不意に後ろから人の気配がしたのでパッと振り返る。
自分が先ほど歩いてきた山道から、黒猫が姿を現した。
「クロ吉!…ということは」
「…千代?」
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