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たどり着いたカフェは、人気店だけあって長蛇の列だった。
視線を気にしつつ、待ち時間を過ごして30分かけて店内に入った。
「何にする?」
「えー、パフェなんでしょ?」
「や、種類あるから!ピーチとかチョコとか!」
「じゃ、雪は何にするの?」
メニューを広げてウキウキする彼女に、尋ねればドヤ顔で、告げられる。
「もちろん、一番人気の限定ピーチ!」
「それじゃ、ベリーでいいや」
他、雪が紅茶、私は珈琲で注文を完了した。
直後、横の席から声が聞こえる。
「嘘ぉー!?パフェもうチョコしか無いんですか!?せっかく来たのに、私もひぃーくんチョコ食べれないじゃん?」
「仕方ないよ、ひな食べて。僕は、パンケーキにしすから…」
「でも、ひぃーくんも楽しみにしてたでしょ?」
可愛い系の女の子と、大人しいめの少年がメニューで揉めている。
「人気って知ってて遅かったんだから仕方ないよ、また来よ?」
「でも、ひぃーくん誕生日でしょ?ひながパンケーキにするよ」
「それは、ダメ。ひな調べて楽しそうにしてたんだから…」
小声で話しているので、他の人にクレームの様に言いたい訳ではないのが、凄くわかる。
「すみません、店員さん。私のベリーのパフェを彼に出してあげて下さい。かわりにチョコ貰えますか?」
楽しみにしていた誕生日が出来ないのが可哀相で、思わずしゃしゃり出てしまった。
「え、お客様?」
「私は、チョコでも大丈夫なので…せっかくの誕生日デートだから」
すると、隣の2人が顔を見合せて笑いだす。
「デートじゃない、ない!友達なの!それよりこちらこそ、でー?」
「でー?」
「ほら、あんたの格好で脳内ショート起こしちゃったの!まもり!」
「もしかして、男だと思った?ごめん、女だよ?あっ!でーってデートって事?違うよ、違うから遠慮しないで?」
そこで、改めて男の子を見た。
そして、心臓が停まりそうになった。
「ひ…め…様?」
それは、私だけじゃなく、彼もだったみたいで、
「き…し…さ…ま?」
「え?ひぃーくん知り合い?」
「まもり?」
それぞれの連れが、ただならぬ空気に動揺する。
そんな2人を無視して、私、『俺』は、彼の前に膝間づいた。
「遅くなり、申し訳ありませんでした。姫様、ようやく見つけられました」
「ちゃんと座って?…もう、身分はないのだから……騎士様。こんなに変わってしまったのにわかってくれるなんて……」
席促され、座るとすぐに手を差し出す。
「愛してます、どうかこの手を取ってくださいますか?」
「……ハイ……今世こそ……只、男になってしまったので……」
「どんな姿でも。、と約束しました」
「確かに……謹んでお受けいたします。……『私』あらため、僕は姫野 氷彩です」
「そうだ、自己紹介しなきゃですね、『俺』改め、私は、岸 まもりと申します」
今さらの自己紹介を終えて、ふと我に返った私達は、互いの連れを恐る恐る見る。
「まーもーりー?」
「ひぃーくん?」
「「説明して」」
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