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しらないこと
僕は旅人。
小さな村にやってきた。
小さな城の周りにはちょっと大きな草原があって、小さな村がいくつかあった。
草原の近くの村に僕は宿を取った。空気も景色もいいからしばらくここに泊まることにした。
お城の人がイイよって言うから、草原を少し使って畑を作る。そこに僕の大好きなお芋を作る。美味しいお芋、お芋が出来るまで、この村にいよう。
草原はいろんな人がいる。見たことがない動物もいる。僕がいる村の人に聞いたら、あれは豚だよって教えてくれた。もっと大きい動物もいた。あれは何かと聞いたら、あれは牛だと言った。どっちも初めて見た。豚も牛も美味しそうに草原の草を食べていた。
ある日、僕がいる村じゃない人が牛と一緒にいた。何をしているのか聞いた。牛はミルクというのが出るからそれを作るために草を食べ終わるのを待っているんだと言った。「ちょっと待ってて」と言うから待っていたら、白い大きな塊をくれた。何かと聞いたらチーズだといわれた。食べたら美味しかった。
宿のある村に持って帰った。僕が美味しそうに食べているのに、村の人は食べなかった。その日から誰も僕と話してくれなくなった。宿には1ヶ月分のお金を渡しているから、亭主は出ていけとは言わなかったけど、亭主も話してくれなくなった。
次の日、牛と一緒にいた人に、美味しかったと言ったら、お礼に牛を畑の近くまで連れてきてくれた。牛は、畑の周りの草を沢山食べてくれたから、畑の近くまで歩きやすくなった。たくさんうんちをしてくれたから、お芋が早く大きくなった。
初めてできたお芋は、牛と一緒に居た人にあげた。でも、あまり喜んで居なかった。それからは近くに来てくれなくなった。
一人では食べられないくらいできたから、話をしなくなったけど、お宿の亭主の家の前にお礼の手紙と一緒に置いた。
次の日久しぶりに、亭主と挨拶ができた。街の人にも少しずつにもお芋をあげたらまた少しずつ話しをすることができた。
牛がきれいにしてくれたから、歩きやすくなったおかげでで、豚も来た。豚は、お芋の畑を荒らしていった。ちょっと悲しかった。
豚の近くにも人がいたから、文句を言ったらその人の豚だった。誰かが畑を作っているのを知らなくて、そのままにしていたらしい。畑を荒らしたお詫びにと、肉というのをくれた。食べ方を知らないと言ったら、よく火で焼いて塩を掛けて食べれば美味しいといわれた。言われた通りに作ってみたら美味しかった。
また村に戻って肉を美味しそうに食べているのに、村の人は食べなかった。そしてまた誰も僕と話をしなくなった。
お宿の亭主なんか今度は「出ていけ」とだけ言った。
そしてあと数日分泊まれるはずだったのに、追い出された。僕は仕方がないから、お城へと向かった。
宿代を払っているのに追い出されたと、お城の偉い人に言った。その前に何があったか教えてくれと言われたから、ミルクと肉の話をした。そしたら、偉い人はそれはお前が悪いと言った。草原で村を分けているのは、村でそれぞれルールが違うからだと言った。知らないお前がその村のルールを破ったからだと言った。
僕が泊まっていた村では、動物が神様だった。神様が作ったものは、神様の大切な日にしか食べないし、神様の肉を食べた僕は神様の反対の悪魔と同じだった。
僕は知らなかった。
誰かの当たり前は別の誰かにとっては当たり前じゃなかった。
旅人の僕はどうすれば良かったのだろう。
もっとたくさんみんなとお話してたら、誰も傷つかなかったのかな。
村の人を傷つけたけど、村の人は僕が傷ついたことはきっと知らないけれど、僕は少しだけ知ることができたから、また新しい場所へ行ったら、今度はもっと上手に過ごそう。
お城と村にサヨナラを言って僕はお芋を持ってまた東へ東へと旅をする。
新しい事と出会いを求めて。
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