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最初に鼻を取られて、後半で差を詰めようとした。
ただ、ただ背中が見えるだけだった。
勝ちたい、勝ちたい、あいつには負けたくない。
そう頭のなかで繰り返すが、
彼の背中は段々と遠ざかって行くだけだった。
並んで走ってきたはずなのに、いつの間にか彼の背中を追い続けている自分がいた。
僕が彼の背中に手を触れることは、二度と無かった。
「ありがとう、ふっきれたよ。」
「あぁ。」
不思議と清々しい気分だった。
きっと僕はこの日を忘れないだろう。
陸上を辞めたことを、後悔しない。
僕はしっかりとした足取りで、未来へ走り出した。
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