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でもね、私、知ってるよ。あなたが本当は私よりも、誰よりも繊細で、プレッシャーに弱いこと。
一番近くからあなたのことを見ていたんだもん。不安で震えていることを悟られないように、いつだって明るく笑ってみんなを引っ張ろうとしていたよね。
そういう、あなたの優しさが愛おしかった。そして同時に、とてもとても悲しかった。
あなたは誰に対しても、本心を見せない。ずっとそばにいる私にも、あなたは抱えている不安や恐怖心を打ち明けることが出来ない。私の前でくらい素直になってくれたらいいのにって、いつもちょっと寂しかった。
でも、彼は違う。
彼は、あなたの心の支えになれる人間だね。彼の前でだけ、あなたは私にすら見せたことのない、力の抜けた穏やかな表情をする。あなたが自分自身の心に嘘をつかずに、真っ直ぐに自分の心を曝け出しているところを、私は初めて見たと思うんだ。
あなたのことが、すごくすごく好きだった。自分の心を隠した上で他人に手を差し伸べる不器用な優しさに、気づいたら惹かれていた。
自分自信を愛しているなんておかしいと自分でも分かっているけれど、あなたを想う気持ちを止めることなんて出来なかった。
好きだよ。ずっとずっと好きだった。
だから、私は「わたし」から消えようと思った。
私がここにいる以上、あなたが「わたし」になれるのは生きているうちの半分の時間しかない。それじゃあダメなんだよ。
あなたは彼のことが好きなんでしょ? 一秒でも長くそばにいたいと願っているんでしょ?
だから、私はここからいなくなるよ。あなたがずっと「わたし」でいられるように。
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