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君は今、どこにいますか。
僕はあれから変わりなく、平凡な日々に言葉を紡いで生きています。
君の止まった時計の針に気づかないふりをしながら、淡々と息を続けているのです。
君のために詩を書いたんだ。君に曲を当ててほしいんだ。
憂鬱を吹き飛ばすような、君が好きな夏色の音を。
わかっているよ。この願いはもう叶わないだなんて。
知りたくない、認めたくないんだ。僕が間違っていたこと。
君がいなくなったこと。
馬鹿らしいプライドで他人を殺して、それでも生きていけるのが人間だ。だから僕もきっと、君がいなくたって生きていけるんだ。
生きていけたはずだったのになあ。
こんなにも哀しくなる理由が、こんなにも虚しくなる理由が、衰退した僕の頭では理解らないのだ。
忘れたくない思い出ばかりが消えていく。ずっと昔、夏の夕暮れに君と見た、泣き出しそうなほど澄んだ黄昏の色を思い出せないのに。
躊躇うことなく背中から空に落ちていった君の、君の晴れ渡る笑顔だけは忘れられないのだ。
さよならさえも言えなかったから、きっとあれは別れじゃないんだ。そんな子供騙しな嘘を抱えて、僕は今日も息をする。
君と同じ場所へ逝くまで、僕は僕を騙しながら生きていくよ。僕の中でだけは、君が生きていられるように。
君と別れたまま冬が来る。夏に出逢い、夏に生きていた僕たちにとって、冬の木枯らしはあまりに冷たい。
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