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「ハリーもお気の毒ですわね。嫌ならばしっかりとお断りすればよろしいのに、軟弱な男だこと」
「そうだねえ。ハリーにだって好きな女ぐらいいるよねえ」
「そ、そう、で、です、わっ。わたく、しは、わたくしだって、ハリ、ハリーのこ、こと、など」
蒼白になって声を震わせながらも、それでもくちに出す言葉だけは変えられないヴィクトリアに、魔女は笑う。
「まったく、変わらない子だね。魔女の前でぐらい、素直になってもいいだろうに。秘密は守るよ?」
「なんのことですの」
「ハリーのことが好きで好きでたまらないって、全身にぶら下げてるじゃないか。それに、向こうの気持ちを決めつけてしまうのは早計じゃないかい?」
だって、そんなことあるわけがない。
いつだって酷いことばかりを言っている自分が好かれているはずがない。
血が滲むのではないかと思うほど唇を噛みしめるヴィクトリアに、魔女は懐から取り出した小瓶を、テーブルへ置いた。
「可愛いヴィーにこれをあげよう」
「なんですの、これは」
「姿を変じる薬だよ」
「って、それは――」
王子を蛙に変えたという、例のあれ?
顔を強張らせたヴィクトリアに、魔女は軽く手を振って答える。
「あの坊やに掛けたまじないとは違うよ。これは特別製さ。たった一晩だけ、愛するひとのもとへ飛んでいける。そういうものだ」
「どんな姿になるんですの」
「それは君次第だよ。君を体現する姿、とだけ言っておこうか」
ヴィクトリアを表す姿ならわかる。
蜂だ。鋭い針を持ってうるさく飛び回り、怖がられて逃げられる、毒を持った蜂。
「試してごらんヴィクトリア。怖がってばかりいては変わらない。失敗したら慰めてあげるよ。もしくはいい男を紹介しよう」
魔女はそう言って、忽然と姿を消す。
残されたのは湯気を立てる紅茶と、褐色の小瓶だけだった。

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