45人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
心臓がどきどきする。
まだよくわからない相手にどう尋ねたら正解なのかと。
「今、どこにいますか?」
さり気なく言うつもりが、僅かにぎこちなくなってしまった。
『あぁ、遅くなる。先に休んでいてもらってかまわない』
即座に切れた携帯電話を片手に、暫くぼおっと呆けた思考回路。
ぐるり部屋の中を見渡す。広いリビングキッチン。ふかふかのソファー。お洒落なルームライトに薔薇の香りまで漂わせて……
「か、帰らないって、なんなのよ!」
私のどきどきを返せと叫びたい。
横目でサイドボードの上に置かれた写真立てを目にした。
「暁斗さん……」
容姿端麗な彼の横でウェディングドレスを着ている私。結婚式は暁斗さんの仕事の都合で後回し、両親の勧めでとりあえず記念写真だけを撮った。
笑えてない。よそよそしさが表情に出ちゃってるみたい。
「お見合い結婚だもんね、こんなものなのかな……」
でも、だからこそ今日は気合を入れてメイクアップしてたのっ。
「新婚初夜に帰らないって、なんなのよ〜!」
投げつけたクッションが床に転がった。
最初のコメントを投稿しよう!