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「だって、毎日なのよ? ろくに会話する時間も無いんだから」
『友梨が決めたんでしょう。ご両親の為に。これで何か問題が見つかったらどうするつもり? 今さら結婚を無かった事にはできないのよ?』
知らないままでいた方が幸せということもある。真奈は暁斗さんの浮気を心配して私を止めてくれたけれど。
「でも、信じたいの」
本当に仕事だとこの目で確かめられたら、きっと心も穏やかになれるもの。
お見合いをしたあの日――
『父さんの顔を立てると思って』
父には懇願されて、母にはすがられた。
『友梨、お父さんね、経営がちょっとね……』
取引先から持ち掛けられた縁談を断れない。仕方なくお見合いに出向いた私を待っていたのが暁斗さんだった。
両親と揉めていたせいで遅刻したというのに。暁斗さんは私を見てほっとした様に笑ってみせてくれた。
「よかった、雨が降って来たから心配してました」
落ち着いた声が弾んで、揺れた瞳が優しげで、絶対にお断りするんだと意気込んでいた気持ちをやわらげた。
暁斗さんをもっと知りたい。お見合いはとんとん拍子に進んだ。
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