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暁斗さん――
意気地がなくて、それ以上暁斗さんを追う事ができず私は家に戻った。
深夜遅く、ようやく暁斗さんが帰って来る。
「まだ、起きていたんですか」
シャワールームからタオルを片手にリビングに現れた暁斗さんは、私を見てびっくりした表情を見せた。
「たまには、お話しがしたくて」
「そうですか。でも、もう遅い。これを飲んだら休みましょう」
暁斗さんは湯気が立つ珈琲のカップに視線を向けながら、静かに私の隣に腰かける。
綺麗な横顔。優しそうなその瞳に惹かれたのに。
「どうしましたか?」
私の視線に気づいて、暁斗さんがこちらを向く。
「まだ、お仕事お忙しいんですか?」
同僚の男性と夜遅くに数時間も、どこで何をしていたの? とは聞けなくて。
「寂しくさせてますか……?」
すっと伸びた指先が、私の前髪をさらり掻き上げた。
「え、ぁ、あの……っ」
暁斗さんが真っ直ぐに私に視線を向けている。鼓動が跳ね上がって上手く返事ができない。
「そろそろ、寝ましょうか」
ふっと微笑んだ暁斗さんに手を引かれて寝室へ。
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