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「オーストラリアの無人島にある、ホワイトヘブンビーチって知ってる?」
あなたは旅のなかで撮り溜めた写真を見せながら、景勝の地をめぐった話を聞かせてくれた。
「エメラルドグリーンの海にぽっかり浮かんでるように見える、白い砂のビーチなんだけどね。その砂っていうのが超こまかくて、手ですくうと粉みたいにさらさらと風に舞っていくんだ。
でね、海水につけるとなんていうか、雪がサイダーにじゅわっと溶けていくみたいな、そんな感触がするんだよ。
青い空と島の森の緑。白い砂と透き通る海。それしかない、まさに天国みたいな風景なんだ」
「フィンランドのサーリセルカは、オーロラのメッカとして名高いところなんだけどね。オーロラっていうと緑色をイメージするよね。でもいろんな条件がそろうと、数年に1度くらいのまれさで赤やピンク、紫がかって輝くやつを見られることがあるんだ。
ほら、これ。ああ、うまく撮影できなかったけど、僕ははじめてでそれに遭遇できたんだ。街の人に、なんてツイてる男なんだ、って驚かれたよ。
漆黒の空に薄く色づいた光のベールが、ふわーふわーってたゆたってるんだ」
そんな美しい場所の話もあれば、極狭の道が複雑にいりみだれ、土器色の高い建物がつづく『迷宮都市』の話もあった。
「モロッコのメディナっていう旧市街はね、世界一複雑な街って呼ばれてるんだ。車が通れないくらい細い通りにたくさんの人が行き交って、荷物をかついだロバやラバもカッポカッポと歩いてて、活気があふれてるんだよ。
街の中心へ向かうほど、ほんとうにどこを歩いているのかわからなくなるんだ。
通りには食べものや食器や楽器や、いろんな小さな店が軒を並べてて、ラクダの生首が吊られている肉屋もあるんだよ。キャメルミートって、食べてみるとこれがけっこううまくて、低脂肪だからヘルシーでね」
あなたの旅の話は、いつまでも尽きることがなかった。
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