6人が本棚に入れています
本棚に追加
犯罪に巻きこまれたのか、遭難事故に遭ったのか、それすらもわからずに、1年経ち、2年経ち、3年が過ぎてもあなたの安否は不明なままだった。
あなたはどこかで、絶対生きている。
だってわたしはお願いしたのだから。
もし無事に帰ることができなければ、幽霊になってでもかならずわたしに会いにきて、と。
あなたは約束をやぶる人じゃない。会いに来てくれないのは、きっと何か事情があるからだ。わたしはそう信じていた。
わけあって記憶を喪失し、身分を証明するものさえなくして、田舎の村人に助けられながらひっそり暮らしているんじゃないか、と。
あなたの行方がわからなくなって5年が過ぎたとき、あなたのご両親からこんなお願いをされた。
「もう慧を待つのはやめて、等深さんはべつの方と幸せになって」と。
わたしは首を振った。
「ごめんなさい。むりです。できません。逆にわたしからお願い申しあげます。どうか気のすむまで待たせてください」
最初のコメントを投稿しよう!