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 犯罪に巻きこまれたのか、遭難事故に遭ったのか、それすらもわからずに、1年経ち、2年経ち、3年が過ぎてもあなたの安否は不明なままだった。  あなたはどこかで、絶対生きている。  だってわたしはお願いしたのだから。  もし無事に帰ることができなければ、幽霊になってでもかならずわたしに会いにきて、と。  あなたは約束をやぶる人じゃない。会いに来てくれないのは、きっと何か事情があるからだ。わたしはそう信じていた。  わけあって記憶を喪失し、身分を証明するものさえなくして、田舎の村人に助けられながらひっそり暮らしているんじゃないか、と。  あなたの行方がわからなくなって5年が過ぎたとき、あなたのご両親からこんなお願いをされた。 「もう慧を待つのはやめて、等深さんはべつの方と幸せになって」と。  わたしは首を振った。 「ごめんなさい。むりです。できません。逆にわたしからお願い申しあげます。どうか気のすむまで待たせてください」
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