婚約破棄されたって、わたしの価値は変わりません。

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「――」 「――」  いろいろな国の言葉やにおいが静かに混じり、溶け合っている。  そんな空間は青を基調としながらも、金銀がアクセントに使われていた。築何百年経っても色あせない美しい館内は、まるで美術館のよう。  クエストを紹介する相談員たちのカウンターは、バーのように少し高く設計されている。  あてがわれた席にエマが着くやいなや、ギルド中に大声が響き渡った。 「ちょっと、エマちゃん。出勤して大丈夫なのぉ!?」  高めの椅子に軽く腰かけて、テーブルに身を乗り出してきたのは――長い銀髪を後ろでひとつに束ねた、細身の男性だ。  切れ長の瞳は涼しげなアイスブルー。  同じ色のショートマントを留める肩当てには、立派な模様が施されている。肘当てや肘当ても同様で、それらは王家の加護を特別に受けている証だ。 「おはようございます、レオンさん」 「おはよう。じゃなくて。ついに婚約破棄されたんですって? おめでとう。どうする? 燃やす?」 「レオンさん。笑えない冗談はやめましょう」  ぽきぽきと指を鳴らすレオンの左中指には太幅の黒いリングが輝いている。 (レオンさんの火魔法だなんて、しゃれにならないから!)  本気で言っているようにも取れるので、エマは仕事用の笑顔を引きつらせた。
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