211人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
フェイスパウダーをはたき直したアメリーの表情は、一段と明るい。
それはきっとメイクのせいだけではないのだろう。
「そういうエマは? アベラルドさんと両想いになったんでしょう?」
「アベラルドさんは冒険者だから、街にいることの方が珍しいのよ」
デートしないのかという問いかけだと解釈して、エマは苦笑いで返す。
アベラルドは今、紹介したクエストの真っ最中だろう。
「ふーん。また進展したら教えてね?」
「それは、お互いにね」
着替え終わったふたりは事務所に挨拶する。
「お疲れさまでーす」
「お疲れさまです」
「はい、お疲れ」
そして先に扉を開けたアメリーが、くるりとエマへ振り向いた。
「エマ。珍しいひとが、待ってるわよ」
「え?」
「じゃあ、また明日!」
にやりと笑みを浮かべて、アメリーは冒険者ギルドから出て行った。
「珍し……?」
エマが外に出ると、アベラルドが立っていた。
「先ほど戻ってきた。……迷惑だっただろうか」
ぼそりと呟くアベラルド。
エマは、いいえ、と首を横に振った。
「おかえりなさい」
会いたかったです。エマはそう付け加える。
するとアベラルドの眉尻が下がり、口角がわずかに上がった。
エマが初めて目にする、アベラルドの笑顔。
「ただいま、エマ」
最初のコメントを投稿しよう!