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プロローグ
僕達はいつも死と隣り合わせで生きている。それは向こうからやって来る事もあるし、僕達が自ら飛び込む事にもなる。それが今なのかもしれない。
「しっかりしろ! 雪春!」
「……あはは……泣かない、で……だい、じょうぶ」
「馬鹿かっ!! 大丈夫なわけ、ねぇだろッ……」
自分が今どんな状態なのか分からないけど、滅多に泣かない親友の秋一、あっきーが泣いてるのを見ると僕は助からないのかもしれない。痛みの感覚なんてないし、頭がボーッとする。
「お兄ちゃん! 死んじゃ、やだッ!」
僕の傍で泣いてる女の子がいる。そのお母さんらしき人も何だか慌ただしい……。
「あっきー……」
「何だ! 居るぞ、どうした雪春」
「……ごめん、て……お母さんに……」
「お前、何言って……」
「お母さんに……ごめんって、伝えて……ね」
「おい、雪春……。おい! しっかりしろよ!」
酷く眠たいや……。そう思ってすぐ、僕は目を閉じていた。
「ゆ、ゆき……ゆきはるー!」
◆◇◆◇
「……あ、れ?」
目を覚ます。そこは真っ白な部屋だ。ここは、あの世なのかな? そう思いつつ周りを見回す。どこまでも真っ白な部屋、でも扉なんて見えない。
「ここ、どこだろ……」
「巳蔵雪春、ですね?」
「えっ……。ど、どこから声が……」
突然部屋の中に響き渡る声、スピーカーみたいなものは無いし人がいるわけでもなさそうだ。
「私は、魂の案内人白銀です。貴方は巳蔵雪春君、間違いありませんか?」
「た、魂の……? は、はい。僕は巳蔵雪春……です」
どこを向けばいいのかも分からないけど上を見上げながらそう答える。
「貴方は幼き少女を助けるため16歳という若さでこの世を去った勇気ある少年です。神は貴方の行動を見ていました。貴方は本来なら、就職し結婚して幸せな家庭を築きその後老衰で亡くなるはずでした。優しき貴方の行動の代償はあまりにも大きすぎる……あの方はとても、嘆いて悲しんでいます」
あの方……? 誰だろう。神様なのかな。それより僕ってば結婚して幸せな家庭を築くんだ。僕は自他ともに認める運動音痴で勉強もダメな高校生だった。それなのにそんな未来があったなんて、ちょっと残念にも思うけど命には変えられない。まぁ、僕は死んじゃったみたいだけど……。
「そこで、雪春。貴方に新たな道を開きます」
「新たな……道? それは、生き返るって事、ですか?」
「そうです。但し、元の世界ではありません。貴方はこれから、転生するのです」
「転生!? えっと、人に? 僕虫は嫌ですッ!」
僕は小さい時から虫が大嫌いだった。蟻ですら見るのもダメなほどで、兎に角虫は苦手だ。
「大丈夫。貴方の行動から虫に転生なんて事はありませんよ。貴方は……由緒ある魔道士の息子として生まれ変わる事になります。それとこれは神からの慈悲でもあります、貴方の自我と記憶をそのまま残しておいてくれるそうですよ」
それが僕にとっていいものなのか悪いものなのか分からない。僕は何をしてもダメで、その度にあっきーに助けられてばかりで……。
それに記憶を残されるのは辛い。僕が亡くなった世界でお母さんがどんなに悲しんでるか想像するだけで……。
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