世界線を繋ぐ駅

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「ここってほんとにA駅前なのか? いったい僕はどこにいるんだ……そ、そうだ! スマホで……」  ならば、もしかしたら違う駅で間違えて降りてしまったのではないか? と、僕はスマホを取り出して地図アプリを立ち上げてみました。 「やっぱりここであってる……」  しかし、GPSもやはりここがA駅の西口前であることを示しています。 「いったいどうなってるんだ……」  もう、何が起きているのかさっぱりわかりません……もしかしたら、もう少し歩けば、よく知る街の景色が広がっているかもしれない。  何がなんだかわけのわからないまま、その知っているようで知らない(・・・・)街を、僕はもう少しぶらついてみることにしました。  ですが、2ブロック、3ブロック先まで行ってみても、やはりどこか気持ちの悪い違和感のある街がそこには存在しています。  しかも、よくよく観察してみると、ますます奇妙なものを発見することになりました。  例えば、ビルの屋上に時折見かける商業用の大型宣伝看板が、この街では何やら農夫や土木工事労働者と思われる人々の絵とともに、「腐敗した資本主義勢力の侵略を許すな!」という標語の書かれたプロパガンダ広告になっているのです。  また、選挙用か政党の宣伝用と思われるポスターのようなものを見かけたのですが、そこにはスーツではなく、何か中国の人民服みたいなモスグリーンの制服を着た人物の写真のとなりに「革命を進める確かな与党 日本社会労働党」と売り文句が書かれています。 「なんか、共産圏の国に迷い込んだみたいだな……」  よりいっそう不気味さと不安を覚えつつ、街の散策を続けた僕は、ある公園の前にたどり着きました。
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