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その場所に存在する公園は僕もよく見知っていましたが、案の定、僕の知るものとはどこか違っています。
まず見て明らかなのは、中央に立つ巨大な人物の銅像です。
僕の記憶では、誰か地元出身の芸術家だかが作った等身大の裸婦像のようなものだったはずなのですが、それがロングコートを着て威風堂々としたおじさんに変わっていて、なんだか旧ソ連にあったレーニンの像みたいにも見えます。
また、そのとなりには旗を掲揚する柱も立っているのですが、そこには地の色を白から赤に、日の丸を赤から黄色に変え、さらに黄色で左上に鎌と槌の絵を描いた、まるで日本国旗のパロディのような旗が風になびいているんです。
「ここ、ほんとに日本か……?」
うっかり違う駅で降りてしまったどころか、最早、違う国に誤って迷い込んでしまったかのような気分がして、よりいっそう強い不安に駆られながら辺りをキョロキョロと見回していたその時。
「君、どうしたのかね?」
突然、背後から声をかけられ、振り向くとそこにはモスグリーンの軍服のような衣服に身を包んだ、背の高い男が立っていました。
頭には制帽を被り、脚には革の軍靴(※ブーツ)を履いて、腰には銀色に輝く鞘のサーベルのようなものも提げています。
「顔色が悪いようだけど、どこか体調でも悪いのかな?」
戦前の憲兵のようなその男が、目深に被った制帽の庇の影から僕を見下ろし、再度、そう尋ねてきます。
「……え、いや、あの……あっ!」
不意のことに驚き、しどろもどろになりながらも口を開いた僕でしたが、なんとなく見た男の襟に〝旭日章〟の徽章が着けられているのがわかりました。
警察!? この人、警官なのか? でも、よく見るような制服じゃないし……こんな軍服みたいの着ている警官もいるのかな? いや、もしかして、自衛隊の中の憲兵的な立場の人とか?
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