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 ◇前置き  私の視力は1.5です。  もちろん裸眼で、です。  虚言癖・妄想癖もないつもりです。  少し長い話になります……  店長と終業後バックヤードに二人きりで、来月のシフトの相談をしていた。 「えー、八千草さんもなの。困ったなぁ」 「すみませーん」  口だけで謝っています。  あの子と休みたい日が被っているのは知っていた。  同じ日のライブチケットが取れたのだろう。この際、話しかけてみるか?でも、なんかいけ好かないんだよなぁ、あの子……やっぱりやめておこう。  店長はパソコン画面にシフト表を出して、顎をかいている。 「土日祝日は出来る限り、出てもらいたいんだけどねぇ」 「先月も今月も、ほぼ出てますよ」  大型ショッピングモールの有名チェーン店は土日祝日は忙しい。だが、あの子は先月も先々月も、土日に休みが入っていたのをみんな知っている。店長のお気に入りという噂はやっぱり本当かしら。  働き盛りの三十代。シュッとした感じで、サービス業に必須の清潔感もあり、好青年っぽいんだろうけど…… 「まいったなぁ」  スッと、何気なく肩に手を置かれた。 「お願いしまーす」  と言いながら、スッと、何気なさそうに横に移動して外す。  オスの匂いのするスキンシップが苦手。セクハラとまでは言えない感じが、計算なのか分からないから、現在、次のバイト先も探し中。 「どうしても、来れない?」 「はい、大学の用事がありまして……」  堂々と悪びれもせず、嘘をついた。  なんか店長、今回はしつこいな。  私一人いなくても何とかなりますって、先月入った新人もやっと独り立ちしましたし。  私のおかげでね。  店長は視線を宙に向けると、焦点を失ったように呆けた表情をした。  んっなんだ?  見てはいけないものを、見させられている気がする。 「店長?」  たまらず声をかけるが――  変な間が空いて、 「……そうか、じゃあ、もう、食べちゃってもいいよね?」  少し残念そうに、こっちを見た。
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