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友人にメイクをしてもらった日からしばらくして、おすすめのビューラーとマスカラを調べた。私には何だかわからなくて、結局は聞いたことのあるメーカーのものを買うことにした。
スマホの画面で商品を見る間、マスカラとビューラーにまつわる出来事を思い出した。
私には小学校のころから好きな曲がある。マスカラがキーになっているその曲は、十年近く私の傍にある。それは失恋の曲で、込められた思いなんて小学生の頃はもちろん、きっと今の私にも本当の意味では理解できないだろう。ずっと聞いていたわけではないけれど、とにかくふとした時に聞きたくなる。誰もいない海辺にいる様な寂しい曲だけれど、それは確かに私の情緒を育てた。
そして私は気付いた。私の情緒を育て、いつも傍にあったその曲の「マスカラ」は私の憧れだった。マスカラの存在そのものが私の情緒であり、憧憬であるのだ。
メーカーにこだわっていたわけでも、忘れていたわけでもなく、私はただマスカラを手にすることが怖かったのかもしれなかった。
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