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「おい、薄井。ちょっとツラ貸せや」
ブラック企業のブラック工場のブラック勤務を終え、女子更衣室を出ようとすると、おっかない声で呼び止められた。
普段から目をつけられないように気配を消していたのに、最近仕事でミスをしてばかりでみんなに迷惑をかけたせいか、ターゲットにされてしまったらしい。
「は…、はい」
私はおっかなびっくり振り返ると、私を呼び止めた龍崎主任さんに向けて、震えながら小さく返事をする。
龍崎さんは20歳の私よりも8つ歳上。まだ30歳になってないのに、もう主任さんになってる。
金髪ロングヘアで耳にはたくさんのピアスが刺さってて、見た目はモロ、ヤンキー。昔レディースの総長だったという噂。
噂といえば、若くして主任になったのも、課長の弱みを握って、課長を脅して昇進したとも言われている。
下の名前は姫華なので、フルネームは龍崎姫華と、厳つさが滲み出ている。
一方の私のフルネームは薄井サチ。
欧米風に言ったら、サチ・ウスイ。
名前の通り、見た目も性格も陰キャそのもの。
いつも背中を丸めて、小さく目立たないように暮らしている。
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