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男性の横にもう一人誰かいるようだ。
「いずれ出します。もうしばらくお待ちください」
やがて僕に向き直った男性がそう言った。
「しばらくってあとどのくらいです?」
しかし男性は答えない。
そして、また来ます、と言って去って行った。
僕は窓に顔を寄せる。
男性ともう一人が遠ざかって行く。
二人とも白衣を着ていて、バインダーを手にしている。
ここは病院なのか?
しかし、と僕は考える。病室にしては随分と変な造りだ。
ドアはこちらから開かないようになっているし、窓も背伸びしたって届きそうもない。
窓から顔をゆっくりと離す。
窓には顔の脂が白くべっとりと付いている。
そういえば、もう何日も風呂に入っていない。
シャワーくらい浴びさせてくれたっていいのに。
ベッドに戻り腰掛ける。
しかし、二人が生きていることを知れて良かった。
またノックの音。
見ると窓の向こうに篠田美弥。
おお、と僕は声を上げて立ち上がる。「来てくれたのか」
僕がそう言うと篠田美弥はゆっくりと頷いた。
そして、横を向き手招きをする。
すると今度は斉田玲子が現れた。
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