篠田美弥と斉田玲子

5/6
前へ
/242ページ
次へ
 男性の横にもう一人誰かいるようだ。 「いずれ出します。もうしばらくお待ちください」  やがて僕に向き直った男性がそう言った。 「しばらくってあとどのくらいです?」  しかし男性は答えない。  そして、また来ます、と言って去って行った。  僕は窓に顔を寄せる。  男性ともう一人が遠ざかって行く。  二人とも白衣を着ていて、バインダーを手にしている。  ここは病院なのか?  しかし、と僕は考える。病室にしては随分と変な造りだ。  ドアはこちらから開かないようになっているし、窓も背伸びしたって届きそうもない。  窓から顔をゆっくりと離す。  窓には顔の脂が白くべっとりと付いている。  そういえば、もう何日も風呂に入っていない。  シャワーくらい浴びさせてくれたっていいのに。  ベッドに戻り腰掛ける。  しかし、二人が生きていることを知れて良かった。  またノックの音。  見ると窓の向こうに篠田美弥。  おお、と僕は声を上げて立ち上がる。「来てくれたのか」  僕がそう言うと篠田美弥はゆっくりと頷いた。  そして、横を向き手招きをする。  すると今度は斉田玲子が現れた。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加